- *つゆり
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「うん……って、さっちゃん!
う、上……お空さんが!?」
- *幸和
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「空? 空がどうした……って」
- *つゆり
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「綺麗な星空……息をするのも忘れちゃうくらい」
- *幸和
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「本当に凄いな」
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そこにはいつのまに晴れたのだろう。
雲一つなくなった夜空には、無数の星々。
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満天の星空を抱く夜空……これだけの星空を見たのは、
それこそ生まれてはじめてかもしれない。
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これを見ることが『星逢い』なのかと思える。
- *つゆり
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「こんなにいっぱいのお星さんが見えると、
どれか一つは手に届きそうに思えるよね」
- *幸和
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「欲しい星でもあるか? よかったら俺が取ってやるよ」
- *つゆり
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「あはは。それはちょっと難しいかも……」
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気付くとつゆりは、これだけの星空から視線を外し、
俺へと向けていた。
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そのことに気付いたのは、星を見上げていたつゆりが、
まるで地上に降りた星のように綺麗で、見惚れていたから。
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心も奪われかねない星空の下、俺達2人はいつの間にか
お互いだけを見つめ合っていた。
- *幸和
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「難しいのか?
頑張り屋のつゆりでも手に出来ないくらい?」
- *つゆり
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「うん。私が欲しいお星さんは手に届くくらいに近くて、
本当のお星さんのように、手が届かないから……」
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そんな風に想ってくれているのか、つゆりは。
-
じっと、俺の目を見て告げてくるつゆりは星明りを受け、
その美しさに息を呑む。
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さっき思った以上に、彼女自身が星のように輝いて見え、
あれほど見慣れていたつゆりが別人に思える。