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莉里香

「あ……！？　も、もしかして、これって……
　この状況って……！！」

　ハッとしたした女の子の視線の先。

　しつこくナンパしていたらしい男が、ナンパ相手の
　連れの人に撃退されていた。

　これは最悪のタイミングだ。

莉里香

「私は大丈夫ですわ！　自分でなんとかできますからっ！」

　やっぱりこういう反応になるよな。

良太

「誤解です！　俺は単純に、あなたが困っているなら
　助けたいと思っただけですから」

莉里香

「そんなに強く否定するなんて……やはりそういう考えを
　もともと持っているからに違いありません！」

莉里香

「私は四条院家の娘です！　見知らぬ男性にホイホイ
　ついていくような育て方はされていませんわ！」

　どうやらやぶへびだ。

　海の家が開いているような時期じゃないし、巡回している
　警官やボランティアパトロールの人も見当たらない。

　でも、本人が嫌がっているなら仕方ないか……

　人通りはそれなりにあるし、歩いているのは男だけじゃ
　ない。

　さすがに、本当に困ったら自分から助けを求めに
　行くだろう。

良太

「警戒させてごめんなさい。向こうに少し歩けば
　コンビニがあるから、道ならそこで聞くといいですよ」

良太

「駅前まで出れば交番もあるから、落とし物なら――」

莉里香

「え、あ、あの、行ってしまうんですの？」

良太

「はい。なんだか怖がらせてしまったみたいですし」

　ナンパ男が出没する海岸だ、なんて悪評が広まったら
　地元の人間としても困る。

良太

「では、さような――」

　俺は早々に立ち去ることに――

莉里香

「あ……あのっ！　お待ちになって！！」

　思いの外大きな声で呼び止められた。

良太

「なんですか？」

莉里香

「そ、その……あなたがどうしてもと言うなら、
　私を助けさせてあげてもよろしくてよ？」