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場内灯が消え、辺りが真っ暗になった。
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会場内の空気が、ぴりりと引き締まる。
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カラカラと歯車の回る音がして、再びうっすらと明かりが戻ってきた。
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緞帳が上がった。
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会場内の温度が、一気に下がったような気がする。
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次の瞬間を想像して、瞬きもせず、誰もが微動だにしない。
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全身で、舞台が動くのを待っている。
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パチンという微かな音と共に、ライトが点く。
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立っているのは、一人の女の子だ。
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華奢で、小さくて、可愛らしい女の子。
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さっきまで俺と会話をしていた幼なじみ。
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そのはず、なのに――
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ステージの上にいる彼女は、別人のようだった。
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何百もの視線の中心にいる彼女の全身から、気迫がほとばしっていた。
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ただそこにいるだけなのに、視線が釘付けになってしまう
圧倒的な存在感……威圧感……
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ああ、彼女は天才なのだと感じる。
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自分の知っている女の子ではないのだと思わされる。
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その時――
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彼女は、確かに俺を見た。
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まっすぐな視線――けれど、微かに不安げに陰っている。
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紛れもなく、俺の幼なじみの顔だった。