【智花】
「和哉……これ、持って」
【和哉】
「これ、って……」
差し出されたものを見て、本日何度目か分からない思考停止状態になる。
【智花】
「ろ、ローターのリモコンよっ……! 言わなくても分かるでしょっ!」
抑え気味の叫び声をあげる智花。
恥ずかしがりながらも解説してくれる殊勝さに、可愛さを感じてしまう。
【和哉】
「そりゃ、分かるよ。だけど……」
【智花】
「和哉に、ろ、ローターの、スイッチを……入れて欲しい、の」
ためらいながら、途切れ途切れに智花が言う。
【智花】
「つ、使い方は……分かる……わよね?」
改めてリモコンを見下ろす。
電源のオンオフスイッチと、強弱を変えるためらしいつまみだけがついている、簡素な作りだ。
【智花】
「あっ……い、いきなり強くしないでね! アソコがびっくりしちゃうから……」
スイッチに手をかけた俺を見て、少し怯んだように智花が言う。
恥じらいながらも、期待のまなざしを向けてくる智花を前にして、既に拒否をするという選択肢はなくなっていた。
【智花】
「ねぇ、和哉……私、どきどきしちゃって……切ない、からぁ……お願い……」
俺が覚悟を決めたことを悟ったのか、智花の瞳がよりいっそう濡れたものになる。
【和哉】
「わ、分かった……いくぞ」
【智花】
「うん、和哉……お願い……っ」
智花のおねだりが、耳にしみこむほどしっかりと間を置いて、俺はローターのスイッチを押し込んだ。