朝いちばんのあいさつは双子の特権

【和也 & 智花
「あ……」

同時に驚きの声を漏らしていた。
危うく鼻と鼻がぶつかりそうになるほど、智花の顔が至近距離にあったのだ。

【智花】
「ど、どうして急にこっち向くのよっ」

【和哉】
「ごっ、ごめん……」

いつもならこんな状況でも『悪かった』とあっさり離れられるはず、いつもならこんなに混乱しないはず、いつもなら……
なぜこんなにどきどきとするのか自分でも分からず、頭がまっ白になる。
それでも慌てて離れようとすると、智花が俺のシャツの前を掴んできた。

【智花】
「待って、離れないで……お願い……」

真に迫った声に、困惑はさらに強まった。

【和哉】
「ど……どうしたんだよ、なにかあったのか?」

【智花】
「なにかあるならそっちの方でしょう? 今日ずっと難しい顔をしていたじゃない」

【和哉】
「心配してくれてたのか?」

そういえば、買い物中も気にしてくれていた覚えがある。

【智花】
「ま、まあ気にはするわよ、私たちは双子なんだし……その、片方が元気がないと、調子が狂うから……」

【和哉】
「ありがとう、智花」

張っていた気持ちが、一気に緩んだ。
そうだ、俺たちは双子だ……智花相手に、どうして緊張したり戸惑ったりなんてしたんだろう?
今日はなにかと、智花が年頃の女の子なんだと実感することが多かったせいで、見方がおかしくなっていたんだろうか?